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2006年6月16日

養殖ハマチ

060616

 出世魚、ブリ。最初にその呼び名について整理しておこう。稚魚は一般にモジャコと呼ばれるが、15センチ級になると関東ではワカシ、関西ではワカナと呼ばれる。3040センチ級が関東でイナダ、関西でツバス。60センチ級が関東でワラサ、関西でハマチ。90センチ級はどちらもブリ。ところが西日本で養殖されたハマチが関東に大量に出回るようになってから、関東でもハマチという名前がいつしか一番有名になってしまった。東京のすし屋などでは養殖物をハマチと呼び、天然物をイナダ、ワラサと呼んだりするから、話はますますややこしくなる。混乱を避けるため、ここではすべてブリと呼ぶことにしよう。

 ブリは本来、美味しい魚だ。油の乗った刺身や照り焼きは、絶品。その上、体にもいい。中性脂肪を下げる働きがあるEPAを、もっとも多く含む。DHAは、ボケ防止にも。さあ、みんなでブリを食べよう。

 釣り人は、皆言う。「やっぱり天然物は最高だ」と。まあ、誰でも自分が釣った魚は美味しく感じるようではあるが。さて、本当のところはどうだろうか?ある行きつけのすし屋で、大将が悩みを打ち明けてくれた。「うちは昔から、必ず天然物しか仕入れてないけど、最近養殖の方がうまいってお客さんに言われて、どうしようか迷ってるんです。」刺身が二切れずつ差し出され、「どっちがうまいか、食べ比べてみませんか?」と。一口食べて、その違いは歴然だった。私が「左の方がうまい。」と言うとその大将、がっかりしたような顔をして、「やっぱりそうですか。それ、養殖物なんですよね。」と淋しそうにうなだれた。「仕入れ値は天然物の方がはるかに高いのに、安い養殖物の方がうまいなんて。」その後そのすし屋の仕入れは、養殖物に切り替わった。最新の養殖技術の向上には、目を見張るものがある。ただ単に生産効率のことを考えるだけでなく、美味い魚を作ろうと、餌の配合を始め、運動量、水温、水質など、あらゆる研究が進んでいる。年々、確実に養殖物は美味くなっているのだ。そしてついに、養殖物は天然物を越えたのだろうか?

 美味いブリになる条件が、仮に餌にあったとしよう。エビを食べて育つと美味くなるとすれば、養殖ではエビばかり与えればよいことになる。したがって、最高のものを100点とすれば、ムラなく90点のブリは作れる。それに対し天然のブリは、様々なものを食べている。時としてクルマエビばかりを食べて育った120点という奇跡的なブリも出現する反面、大半の天然ブリは5060点といったところか。なぜなら大半のブリは、いつもエビ類に出会えるわけではなく、飢えを凌ぐためにイワシもイカも食べて育つからだ。

 かくして、結果的に養殖物は天然物を越えたのだ。まあ、常に天然物を味わえる釣り人としては残念な気もするのだけれど。

(写真は、東京湾で釣れたイナダ。もちろん、天然物。)

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