キャッチ&リリース GT編
「な、なんてことするんだ!」大きな叫び声を上げたのは、マレーシア、ペナン島のガイド船の助手。徳永兼三氏が、釣り上げた20キロ弱のGTをごく当たり前のようにリリースした瞬間だった。大騒ぎする彼にキャッチ&リリースの意義をなんとか説明しようと試みるのだが、彼らにはどうしても理解できないらしい。
釣り人が釣った魚をすべてキープすれば、どんなに素晴らしいポイントでもあっと言う間に場荒れが進む。特にGTのような魚はそれが顕著で、かつてのフィッシングパラダイスが数年で釣れないポイントになってしまった例はいくつもある。徳永氏はそれを誰よりもよく知っているし、キャッチ&リリースの有効性を彼らにも理解してほしかった。GTがいなくなれば当然釣り客は来なくなり、ガイド船の商売も成り立たなくなる。したがって彼らのビジネスのためにも、釣り客にキャッチ&リリースを奨励すべきだ。
ところが、現実はそう単純ではない。当地では釣り客自身が持ち帰る魚以外は、すべてキャプテンへのチップとなる。キャプテンはその魚を売って、大きな収入を得る。中でもGTは美味な魚として高く売れるようで、その大物となれば札束にしか見えない。彼らにとって我々のキャッチ&リリースは、まさに札束を海に捨てているとしか思えず、「日本人はクレージーだ」ということになる。ガイド船の今後のビジネスのためにという観点で彼らに理解させようと試みるが、後にこれも不可能だということが分かる。ホワイトロックという好ポイントには多数の漁師が押しかけ、網を引いてGTを根こそぎ持っていく。マレーシア領だが、タイから来ている職漁船も見た。多国籍の船が入り乱れ、われ先にと泳ぐ札束を捕獲している光景を見た時、どうして「おまえだけはGTを逃がせ」と言えるだろうか。キャッチ&リリースへの道のりは、遠い。
(写真は、ホワイトロックの周りで網を引く怪しい漁船。多数のGTが、あっという間に捕獲されていく。)
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